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人手不足で採用したいけど…その課題は本当に採用で解決するの?

ヒロシ

あー!この報告書、先方に提出するの忘れてた…。カチョー、どうしましょう。ヤバいッスね。

カチョー

おいおいヒロシ、勘弁してくれよ。先月もじゃなかったっけ?

ヒロシ

申し訳ないッス…。でも、仕事が多すぎて、回ってないんですよ。もっと人を増やしてくれたら、こんなことはなくなると思うんですけど。

カチョー

そりゃあ僕だってそう思うよ。だからシャチョーには現場の人手不足を匂わせてはいるんだけど、なかなか厳しいんだよ。

シャチョー

まぁまぁ2人とも落ち着いて。人を入れたいとは思ってるんだけどね、経営目線で見るとなかなか一筋縄にはいかないんだよ。

帝国データバンクのレポート「人手不足に対する企業の動向調査(2025年4月)」によると、正社員の人手不足を感じている企業の割合は、2025年4月時点で51.4%、非正社員では30.0%にも上っているとのことです。正社員に関して言えば、もはや半数以上の企業が人手不足を感じているという結果に。「わかるわかる」と頷く経営者や雇用者の方も多いのではないでしょうか。

今回は、「2024年版中小企業白書」も参考にしながら、「人手不足」を感じた際にまず考えて欲しいことをトピックにしていきます。

目次

まずは「人手」の「原資」を確保できるか

「人手不足で大変だ」と感じたとき、その理想形は「新たな人材を採用し、定着させること」と考えるかもしれません。しかし、実際には2025年11月の有効求人倍率は1.18倍と売り手市場は続いており、採用すること自体が厳しくなっています。

欲しい人材を獲得するためには、やはり雇用条件の良さが大切です。中でも給与や賞与の金額は、良くも悪くも重要視されるでしょう。更に、せっかく苦労して「採用」ができても、そこに「定着」をしてもらわなければあまり意味がありません。繰り返しますが、昨今は売り手市場。転職のハードルも低くなっています。採用だけ行っても、定着の努力を怠れば、長く勤めてもらうことができないかもしれません。

定着を促すための施策としても、やはり最もインパクトが大きいものは賃上げではないでしょうか。その他、可処分時間の多さや、子育てのしやすい勤務環境、といった「良質な雇用」の創出も、人材の確保・定着に影響を及ぼすと考えられます。

賃上げは言うまでもなく、こういった「良質な雇用」の創出も、必要なのはその「原資」です。つまり、売上・利益を増やし、雇用の原資を確保するという取り組みが求められるでしょう。「人手が足りないから売上が上がらない」というのはひとつの面からは事実かもしれませんが、人手を確保するための原資がなければ、持続的な人手不足解消には至らないとも言えるのです。

人材不足は、単に「人を採用すれば何とかなる」というわけではなく、経営全体の課題を捉えていく必要と考えます。

カギになる「生産性向上」

賃上げ原資の確保のためには、利益の確保が必要になります。利益確保のためにまずは「売上を拡大させたい」と考えたとします。売上拡大は販売数の増加や単価の引き上げが基本になります。単価の引上げを実施したい場合、考えられる方法の1つは「付加価値を向上させ、競合他社との差別化を図ること」です。

また、利益の確保は「経費削減」という面からの達成も考えられます。つまり、「いかに業務を効率化し、省力化するか」を考えることで、少ない人員でも利益を上げる方策を検討していきます。

賃上げだけでなく「良質な雇用」の創出についても考えても、同じ結論に至ります。「良質な雇用」の創出のためには、「働き方改革の推進」、具体的には、「有給休暇の取得推進」や「育休制度の推進」、「残業時間の制限」などの取組が求められます。しかしこういった施策は業務時間が減ってしまうため、ともすれば人材不足に拍車をかけかねません。こちらも同じように、「いかに業務を効率化し、省力化するか」がカギとなるでしょう。

このように、「人手不足」という問題に対する課題を検討したところ、総じて必要なことは、付加価値向上や省力化などによる「生産性の向上」であるともいえます。そして、それを推進するための方策としてIT化も考えられるでしょう。例えば、クラウドシステムやオンライン会議などを利用し、通勤時間や移動時間を省き効率的に作業をできるようにすることは、その最たるものです。

省力化のための設備投資やIT化に関しては、国も導入を推しているところですので、対応する補助金もあります。例えば、「中小企業省力化投資補助金」は、まさに省力化投資を検討する事業者向けの補助金になっていますし、定番になった「IT導入補助金」などもそうでしょう。

ここまで生産性向上を考えると、逆に「今ある人材で経営を持続できないか」ということも検討事項に入ってくるのではないでしょうか。少ない人材で事業を持続できれば、それは大きな強みになるはずです。

ヒロシ

確かに、AIを駆使したら、もっと業務も効率化できるし。

ハカセ

まずはそういう工夫からじゃな。しかしそれでも人材が必要だと思ったら、次に「どんな人材が必要か」を考えてみるのじゃ。

どのような人材を確保するか

それでは「人材の確保・定着」のもう少し実際的な行動について見ていきましょう。ここからは、中小企業庁が提示している「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」を参考にお話します。

出典:中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン

まず、考えるべきは、「人材を補うことで解決したい、自社の経営課題は何か」ということです。

新しい商品を開発したいんだけど、それを引っ張っていってくれる人材がいないなぁ。

皆、自分の都合に合わせて生産をしていて、統括的な生産管理ができていないわ。

財務状況をしっかりと理解している人がいなくて、取引先への価格交渉ができないよ…

社長も社員も、いろいろと問題に気付いているようですね。この「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」では、課題を10個提示しています。

  1. 営業が不十分/販路を拡大できない
  2. 商品・サービスの開発・改善ができない
  3. 技術力の向上に取り組めず、研究開発が進まない
  4. 生産管理が十分にできていない
  5. 財務体質を改善できない/価格転嫁ができない
  6. デジタル化等による業務効率化やコスト削減の必要がある
  7. 人材確保に努めているが採用に至らない・定着しない
  8. 賃上げができない
  9. 人材育成が十分にできていない
  10. 事業を承継する後継者が見つからない

ガイドラインでは、それぞれの課題に関してより具体的に課題や悩みを提示していますので、ぜひ参考にしてみてください。その課題を明確にできたら、次に、その業務を担わせたい人材は「中核人材」なのか「業務人材」なのかを判断するとよいでしょう。

  • 中核人材
    事業上の様々な業務において中核を担う人材、高度な専門性を有する人材
    • 各部門の中枢として、高度な業務・難易度の高い業務を担う人材
    • 組織の管理・運営の責任者となっている人材
    • 複数の人員を指揮・管理する人材
    • 高い専門性や技能を有している人材
    • 将来、経営層の一員として想定される人材
  • 業務人材
    事業運営において各部門/業務の遂行を担う人材、専門性や技術レベルは高くないが事業の運営に不可欠たる労働力を提供する人材
    • 各部門において、比較的定型的な業務を担う人材
    • 組織の管理・運営の責任者となっていない人材
    • 中核人材の指揮・管理のもと業務を行う人材
    • 中核人材の補助的な業務を行う人材
    • その他、高い専門性や技術レベル、習熟度を有していないが、事業の運営に不可欠たる労働力を提供する人材

自社の経営課題と照らし合わせ、どういった人材が欲しいのかを精査していきます。その結果、確保したい人材タイプに応じて、

  1. 「中核人材の採用」
  2. 「中核人材の育成」
  3. 「業務人材の採用・育成」

という3つの方向性が考えられます。このガイドラインでは、具体的な施策に結びつける「3つの窓」として紹介しています。

一方で、どちらの人材レベルに関しても、求める人材が「ここで働きたい」と思うような職場環境づくりは必要とされています。具体的には、

  • 人事評価制度の策定・見直し、キャリアパスの見える化
  • 労働条件・処遇の見直し、テレワーク
  • 業務の「マニュアル化」「デジタル化」による業務効率化・アウトソーシング

などです。こういった環境整備に関しても、やはり根底には「生産性向上」が絡んでくると考えてよいのではないでしょうか。

まとめ:「人手不足」は本当に「確保」すれば解決するのか

それでは、今回の内容をまとめてみましょう。

  • 人を採用するためには、その「原資」が必要。売り手市場の昨今は、それに必要な「原資」も大きくなっているので注意。
  • 従業員の定着を図るには、継続的な「賃上げ」が望ましい。そのことも踏まえると、確実に利益を出していける見込みがあることが必須。
  • 利益確保のためにカギになるのが「生産性向上」。付加価値向上や省力化を目指していく。
  • 人材をどのように確保していくかに関しては、中小企業庁が提示している「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」も参考に。欲しい人材がどういった人材なのかを整理するとよい。

少し概念的な話になりましたが、大切なのは「その課題は本当に人手の確保で解決できるのか」ということです。何となく「人手さえあれば」と考えるのではなく、「本当に解決したい問題は何か?」、「今ある人材で効率化できないのか」、「新規採用をするのであればそれだけの利益は出せているか」、といったことも考えてみてください。

シャチョー

なるほど、これまで採用をするかどうかでかなり悩んでいたけど、まずは自社の課題を洗い出してみることから始めよう!

カチョー

そうですね!業務効率化をより徹底しつつ、我々にはどんな人材が足りないのかを考えてみます。

ヒロシ

ですね!僕はカチョーのITリテラシーを挙げることが業務効率化への第1歩だと考えました!早速このIT研修動画、見ておいてください。

カチョー

え?僕の能力向上が最優先なの?はい、頑張ります…

大森良夫のアバター 大森良夫 中小企業診断士

ネットビジネス・テクノロジー(株)代表取締役 / 中小企業診断士
ヤフー株式会社に13年勤務し、システム開発・サービス企画・広告営業・事業戦略などネットビジネスの大半の職種を経験。2016 年に独立後は、ECを中心に多業種のWEB システム開発・マーケティング支援に携わり、近年は越境ECに注力している。中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー。

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